置換系とは、要素の並びに対して「この要素をこの要素列に置き換える」という規則を繰り返し適用していく計算系である。ごく単純な書き換え規則から複雑な構造が育つ様子を観察できるため、セルオートマトン、チューリング機械、タグ系、レジスタマシンと並ぶ基本的な単純計算系として扱われ、フラクタル幾何学の形式的な基礎にもなっている。

挙動を決定的に分けるのは、置換が各要素に独立して適用されるか、隣接要素との干渉を伴うかである。近傍独立な置換系では、すべての要素が同時に、他の要素と無関係に展開されるため、生成されるパターンは必然的に規則的な入れ子構造となる。三角形を三つの小三角形に置き換える規則から得られるシェルピンスキーのガスケットが典型例であり、要素数の増加もフィボナッチ数列のような線形の漸化式で記述できる。つまり、任意の世代の状態を逐次計算せずに予測できる。

一方、置換の適用に順序や干渉が導入されると振る舞いは一変する。Stephen Wolfram が扱った逐次置換系は、文字列全体を走査し、最初に一致したパターンだけを書き換えて次の走査に移る。どこを先に書き換えたかが以降の一致箇所を変えるため、更新順序そのものが系全体の複雑性を決める要因となり、自己相似的な規則性を超えて予測困難な振る舞いが現れる。置換系は、単純な規則から自己相似性と複雑性の双方がいかに生じるかを示す事例として、計算的等価性原理の議論でも参照される。