格子ボルツマン法(LBM)は、1980年代後半に確立された流体シミュレーションの手法である。ナビエ・ストークス方程式を直接離散化する従来の数値解法とは異なり、格子上に置かれた粒子の速度分布関数を時間発展させることで流れを再現する。統計力学のボルツマン方程式を離散化したものであり、計算は各格子点で分布を局所平衡へ緩和させる衝突工程と、その分布を隣接格子へ受け渡すストリーミング工程の二段からなる。

LBMは、粒子の有無をビットで表す格子ガス・オートマトンの後継として生まれた。個々の粒子ではなく確率分布を扱うことで、前者につきまとった統計的ノイズや格子の異方性といった問題を克服し、工学的に実用的な精度と効率を獲得した。一方で計算が完全に局所的であるという性質は保たれており、セルオートマトンに近い構造をもつため並列化に適し、GPU実装との相性がよい。単純な局所規則の反復から渦や乱流といった大域的な振る舞いが立ち上がる点は、生成的な映像表現とも親和性が高い。