セルオートマトン(CA)とは、格子状に並んだセルが、自身と近傍のセルの状態だけを参照する局所的な規則にしたがって一斉に更新される、離散的な計算モデルである。時間・空間・状態のすべてが離散化されており、中央の制御を持たないまま、反復される局所的な相互作用から秩序の形成、崩壊、循環、増殖といった複雑な振る舞いが立ち上がる。

起源は1940年代のロスアラモス国立研究所にある。自己複製を物理的な機械ではなく論理的な過程として理解しようとしたジョン・フォン・ノイマンに対し、スタニスワフ・ウラムが離散的な格子の上で計算する還元的な手法を提案したことで、格子状の宇宙における動的な秩序形成という枠組みが確立した。1970年のライフゲームは、ごく単純な生死の条件から生命的に見えるパターンが現れることを広く知らしめた。1980年代にはスティーブン・ウルフラムが、一次元・2状態・3セル参照の初等セルオートマトンを網羅的に調査して振る舞いを分類し、そのうちルール110が計算普遍性をもつことが後に証明された。

応用は物理現象の微視的なシミュレーション、画像の生成と圧縮、人工生命の研究に及び、宇宙そのものを計算過程と見なすデジタル物理学の議論にもつながっている。近年は遷移規則を固定せずニューラルネットワークとして学習させる Neural Cellular Automata が現れ、粗い格子の上で全体構造を自己組織化させたうえで各セルが細部の色やテクスチャを描き出すことで、高解像度の画像生成も可能になった。