計算的等価性原理(Principle of Computational Equivalence, PCE)とは、スティーヴン・ウルフラムが『A New Kind of Science』(2002)で提唱した、計算の宇宙に関する経験的な原理である。ほとんど自明に単純なもの以外のあらゆるプロセスは、互いに同等の計算の洗練度をもつ、と主張する。

主張は三点に要約できる。第一に、自然現象であれ数学的手続きであれ、あらゆるプロセスは計算として記述できる。第二に、極端に単純でないシステムはある閾値を超えると同等の計算の洗練度に達し、その多くは万能計算能力(チューリング完全性)をもつ。第三に、したがって万能性は計算の宇宙にありふれた性質であり、特別な設計の産物ではない。根拠となるのは、セルオートマトン、モバイル・オートマトン、チューリング・マシン、タグ系、レジスタマシン、置換系など、形式も操作対象も異なる単純な計算系が、いずれも単純な規則から複雑な挙動を生み、万能性に到達しうるという観察である。ルール110の万能性の証明はその代表例にあたる。

この原理からは計算的既約性という帰結が導かれる。系の挙動を近道して予測する一般的な方法は存在せず、結果を知るにはその系を一歩ずつ走らせるしかない。一方で理論計算機科学の側からは、P vs NP のような計算量クラスの差異を無視している、経験的な観察であって定理ではない、という批判もある。PCE の射程は実用上の効率ではなく、自然発生的な単純な規則のなかにも高度な計算能力が現れうるという見取り図の提示にある。