《BNE Water Foundation》は、匿名のグラフィティ・アーティストであるBNEが2011年に立ち上げた社会実践型アート・プロジェクトである。シンプルなHelveticaフォントを使用し、誰もが「BNE」ステッカーを作って貼れるという暗黙のゲームルールは、アーティストの知名度を世界的なものにした。BNEはその知名度を商業的な成功よりも、発展途上地域への安全な飲料水と衛生設備の提供という社会課題の解決へと転換する。このプロジェクトでは、グッズ販売による収益を水支援へ還元する仕組みを構築し、世界中のアーティストや支援者が一つの目的のために参加できるプラットフォームを目指した。また、支援者が購入したステッカーを街に貼るゲーム性は、同時に活動の広告ともなっていく。BNEは、ストリートアートを反体制的な表現から、人々を結びつける社会的インフラへと展開することを試みた。
《BNE Water Foundation》は、現実社会を発表の場とする「ソーシャリー・エンゲイジド・アート(社会参加型アート)」の実践としても捉えられる。作品の価値は、人々の参加や寄付、コミュニティの形成、そして実際に生活環境が改善されるプロセスにある。ストリートアートが持つ発信力を社会変革へと接続した本プロジェクトは、芸術とアクティビズム、ゲームデザイン、慈善活動の境界を横断する試みとして、新しい実践の可能性を提示した。
※本展の開催にあたり、BNE Water Foundationに連絡を取ることを国内外で試みたが、叶わなかった。しかしながら、日本の著作権法上、Helveticaフォントで作られただけのテキストは著作物とは認められず、また「BNE」は国内で登録商標に登録されていないことを各専門機関の協力により確認した。私たちは、この匿名のアーティストに敬意を表し、ここに提示する。