《upgradeTo(Leviathan)》は、Ethereum上の100個のアップグレード可能なスマートコントラクトと、ひとつのERC-721トークンで構成される。コントラクトはそれぞれ「市民」と名づけられ、固有のデータを持つ。市民は自分のデータから30個の点を描き、100人の点が重なって、画面に星空のような風景をつくる。<br />
`upgradeTo()` は、アドレスとデータをそのままに、実装コードだけを差し替える関数である。脆弱性の修正や規制への対応などに使われる。この作品では、市民ごとに定められた時刻を過ぎると、誰でもその市民の `execute()` を呼び出せる。市民は別の実装コードへ切り替わり、呼び出した者は市民が保有していたETHを報酬として受け取る。<br />
市民が持つデータは、切り替わりの前後で変わらない。前のコードはそれを星として読み、後のコードは同じデータを、ホッブズ『リヴァイアサン』の口絵に拠る身体の断片として読む。100人のデータには、はじめから星空とリヴァイアサンの両方が含まれている。<br />
切り替わり先のコードには、ブラックリスト、資産の凍結、本人確認、徴税など、既存のステーブルコインやプロトコルから取った機能がひとつずつ書かれている。切り替わった市民の実装をさらに差し替えられるのは、トークンの所有者だけである。その権限は、移行が進むほど広がっていく。<br />
Ethereumとその上のアプリケーションは、社会で使われるにつれて改修を重ねてきた。ひとつひとつの変更は、分権性を損なうものとも、必要な折衷とも読める。移行が重なった総体が怪物のようなものになっているのかどうかは、ひとつの移行を見ているだけではわからない。
