平行投影は、視線を平行な直線の束として扱い、対象を投影面へ写す図法である。視点を無限遠に置くため投影線が一点に収束せず、消失点をもたない。距離によって物体が縮小しないので、画面上の長さがそのまま実寸に比例し、画面のどこにある物体も同じ縮尺で描かれる。等角投影(アイソメトリック)や斜投影はその代表的な種類で、機械製図やCAD、建築図面のように寸法の把握が求められる場面で標準的に用いられる。
線遠近法が単一の視点と、そこから世界を見る特権的な観察者を前提とするのに対し、平行投影には中心がない。画面のあらゆる場所が等価に扱われるため、視点の移動や場面の連続を画面内に共存させやすい。中国の山水画や日本の絵巻物が、巻物を繰りながら複数の場所と時間をひとつの画面に並置してきた構成は、この性質と親和性が高い。同様の理由から、盤面全体を等しく見渡す必要のあるアイソメトリック視点のゲーム画面にも広く採用されている。
映像を各フレームの積層として三次元ボリュームに変換し、その断面を任意の角度で取り出す処理では、消失点へ収束していた遠近法的空間が徐々に消失点のない平行投影的な構造へ移り変わる。古澤龍の《Passing》はこの変容そのものを主題とした作例である。