ブロックチェーンとは、取引の記録をブロック単位でまとめ、各ブロックに直前のブロックのハッシュ値を含めることで鎖状に連結した分散型台帳である。台帳は特定の管理者ではなくネットワーク上の多数のノードが保持し、どのブロックを正当とするかはプルーフ・オブ・ワークやプルーフ・オブ・ステークといった合意形成の仕組みで決まる。過去の記録を書き換えるとそれ以降のハッシュがすべて食い違うため、改変が検出可能であり、中央集権的な機関を介さずに記録の一貫性を保てる。2008年にサトシ・ナカモトの名で公開された論文とビットコインの稼働が最初の実装であり、2015年に稼働したイーサリアムは、台帳上でプログラムを実行するスマートコントラクトを導入して用途を送金の外へ広げた。

美術の領域では、この仕組みは作品の真正性と所有の履歴を記録する基盤として用いられる。イーサリアムやテゾスといったチェーン上でトークンを発行(mint)することで、複製が容易なデジタル作品にも、誰が発行し誰が所有してきたかという来歴を持たせられる。ここで担保されるのは画像そのものの唯一性ではなく、台帳に刻まれた発行と移転の記録であり、そのずれ自体が批評の対象にもなってきた。

さらにブロックチェーンは、価値がどのように成立するのかを問う素材としても扱われる。ケヴィン・アボッシュは『I AM A COIN』(2018年)で自身をイーサリアム上の10,000,000個のERC-20トークン(IAMA)として発行し、同時に自らの血液でコントラクトアドレスを紙に印字した物理作品を制作した。同年の『Forever Rose』は、チェーン上にのみ存在する単一のERC-20トークンとして100万ドル相当の暗号通貨で売却され、売却益は全額が青少年プログラミング教育の財団に寄付された。いずれも、既存の金融機関や美術制度を経由せずに価値と存在を成立させる実験である。