ブロックチェーンプロトコルとは、中央の管理者を置かずに分散したネットワーク参加者のあいだで記録の正しさを合意し、データや価値の移転を成立させるための規約群である。取引の記録をブロック単位でまとめ、暗号学的ハッシュで連鎖させて改変を検知可能にする台帳構造と、どのブロックを正当とみなすかを定めるコンセンサスアルゴリズム、そして参加者間の通信規則が中核をなす。Ethereum 以降のプロトコルは台帳上でプログラムを実行する機能を備え、トークンの発行や譲渡の条件をコード自体に埋め込めるようになった。この上に構築される規格化されたトークン(代替可能な ERC-20 型と、一点性を持つ NFT 型)が、デジタル作品の発行・所有・流通を支える基盤となっている。
芸術実践においてブロックチェーンプロトコルは、単なる決済技術ではなく、作品の存在形式そのものを規定する枠組みとして扱われる。美術館や画廊、金融機関といった既存の権威による認証を経ずに、ネットワークの分散的合意だけで真正性と価値が成り立つという性質が、価値がいかにして社会的に構築されるのかを問う素材になるためである。ケヴィン・アボッシュは自身を暗号通貨としてトークン化する試みにおいて、身体という有限な物質と、脱中心化されたプロトコル上に半永久的に残る記録とを対置させた。またチェーンの選択自体も表現上の選択となる。手数料構造や消費電力、集まる作家層の傾向がチェーンごとに異なるため、どのプロトコルで発行するかが作品の流通経路と受容の文脈を左右する。