暗号資産トークンとは、ブロックチェーン上で発行・管理されるデジタルな単位であり、通貨的な価値や所有権、あるいは特定の意味を表象するために用いられる。同一規格のトークンが相互に等価で可分な代替可能(fungible)なもの(EthereumのERC-20規格などがこれにあたる)と、個々が一意で不可分なNFTに大別される。いずれの場合も、トークンの真正性と保有履歴は中央機関の認証ではなく、ネットワーク参加者の分散的な合意によって担保される。
芸術の文脈では、トークンは投資対象である以前に、所有・希少性・分配・価値生成のしくみそのものを主題化する媒体として扱われてきた。コンセプチュアル・アートが物質としての作品からアイデアの提示へと主軸を移したのと同じ論理で、トークンは作品を台帳上の記載として存在させ、鑑賞の対象を物体から取引の構造へとずらす。
ケヴィン・アボッシュの実践はその代表例である。《I AM A COIN》では作家自身を「コイン」として自己トークン化し、Ethereum上に10,000,000個のERC-20トークン(IAMA)を発行した。《Forever Rose》では単一のトークンのみがブロックチェーン上に存在する作品として扱われ、《PRICELESS》では不可分なものと極端に分割可能なものという対照的なトークン設計が並置された。いずれも、価格形成やアート市場における商品化のプロセスそのものを批評の対象へ反転させる装置として機能している。