iPhoneのパノラマ機能は、カメラを一方向に振りながら連続的に画像を取得し、それらを継ぎ合わせて通常の画角を超える横長の一枚に合成する撮影モードである。単一の露光による記録ではなく、走査しながら時間をかけて取り込んだ像の集積であるため、被写体や撮影者が動くと、継ぎ目のずれ、像の伸縮、同一の対象の重複といった破綻が生じる。この破綻は単なる失敗である以前に、写真がもつ「一瞬の切り取り」という前提が崩れ、時間が空間のなかへ折り込まれていることの表れでもある。

この性質を積極的に用いる作品も現れている。ケヴィン・アボッシュとリヒャルト・プロイガーの連作《True Transformers》では、実在する自動車をパノラマ撮影しながら走査を意図的に狂わせることで、車体が別の姿へと変貌する。カメラは現実の対象に向けられているにもかかわらず、記録の手つきを壊すことによって、写真の指標性と「本当の姿」という観念そのものが問い直される。走査で得られた映像を厚みをもつデータの塊として扱い、空間と時間の秩序を組み替えていく発想は、時空間ボリュームやスリットスキャンの系譜とも接続する。