時空間ボリュームとは、映像を平面上を流れる連続画像ではなく、時間軸を第三の次元とする三次元の立体として扱う考え方である。撮影された各フレームを奥行き方向に積層すると、横(x)・縦(y)・時間(t)を軸にもつ直方体のデータ塊が得られる。通常の再生はこの立体を時間軸に垂直に切った断面を順に見る行為にすぎず、切断面の角度を変えれば、通常の再生では決して現れない像が取り出せる。

たとえば時間軸に対して斜めに、あるいは平行に切れば、同じ画面内に異なる時刻が並び、静止した被写体が引き伸ばされ、動く被写体が歪む。1本の走査線を時間方向に積み上げる slit-scan はこの操作の古典的な一例であり、時空間ボリュームはそれを任意の切断面へ一般化した枠組みといえる。ここで映像は記録の連なりではなく、色彩情報を蓄えた可塑的な塊として、彫刻のように扱われる対象になる。

人間が直接知覚できない高次元の形式へ映像を再構成し、そこから「あり得たかもしれない別の時間」の断面を切り出すという操作は、遠近法的な空間の一貫性や、一枚の画像が単一の瞬間に属するという前提を解体する。古澤龍は《Passing》や《Mid Tide #3》(2024)といった映像インスタレーションで高フレームレート撮影と自作ツール imgtrans による時空間ボリューム抽出を用い、波や身体の運動から時間の厚みを取り出している。