メディアエコロジーとは、メディアを情報を運ぶ道具としてではなく、人間の知覚や思考、社会関係を形づくる環境として捉える研究の視座である。ニール・ポストマンが1960年代末に提唱し、マーシャル・マクルーハンの「メディアはメッセージである」という洞察を理論的な下地に持つ。文字、印刷、電気メディア、そして計算機といった技術はそれぞれ固有の時間感覚と空間感覚をもたらし、そこに棲む人間の側を作り変える。技術の内容ではなく、それが生態系のように成立させてしまう条件そのものを問うのがこの立場である。
2000年代以降は、マシュー・フュラーらによる物質論的な再定義を経て、メディアを人間だけの環境とみなさない議論へと展開した。ここではソフトウェア、電力網、鉱物資源、生物、データセンターの熱までもが相互に作用する層として扱われ、人間中心主義の外側にメディアの生態系を描き直す試みが行われている。人新世をめぐる議論や、人工生命・生成システムの研究と接続するのはこの局面である。
展覧会「もつれのパターン / Patterns of Entanglement」(NEORT++)はこの概念を軸に、世界を倫理的・生態学的・社会的・政治的なプロセスが絶えず再生し変容し伝達される場として捉えた。参加作家は人工的プロセスと生物のあいだ、人間と非人間のあいだでメッセージを交換させながら、新自由主義的な「現実」を別のエコロジーへ編み替える道筋を示している。有機物とデジタルが融合し、人間が炭素とシリコンのハイブリッドへ変容していく状況を含め、複数のエコシステムの重なりを可視化する試みとして構成された。