時間ベースのメディアとは、作品が持続をもち、時間の経過とともに展開することを本質とする表現媒体の総称である。映像、映画、音、パフォーマンス、コンピュータで動作する作品などが含まれ、絵画や彫刻のように一瞬の視野で全体を把握できる媒体と対比される。鑑賞者は作品が提示する時間の流れに付き合うことになり、上映時間や再生速度、繰り返しの構造そのものが作品の要素となる。美術館ではこの語は保存修復の分類としても用いられ、フィルム、ビデオテープ、スライド、音声、ソフトウェアといった再生機器と規格に依存する作品群を指す。再生環境が失われれば作品も失われるため、機器の保存や別形式への移行が課題になる。
デジタルの映像は、この時間性を計算の対象として扱える。動画をフレームの列としてではなく、二次元の画面に時間軸を加えた三次元の立体、すなわち時空間ボリュームとみなすと、通常の再生は時間軸に垂直な断面を一定間隔で提示しているだけの限定的なサンプリングにすぎない。断面の向きを変えれば、スリットスキャンのように画面内の位置ごとに異なる時刻が並ぶ映像が得られる。フレームレートや走査の方式は、この立体をどう切り出すかという選択として理解できる。
時間ベースのメディアにおいては、複数の要素のあいだの同期も中心的な問題になる。映像に対して音をその場で生成する仕組みでは、出来事の生起と音の立ち上がりを一致させる処理が要求される。逆に画面内で参照される時刻をずらせば、空間の見えかたも音が成立する条件も揺らぐ。時間の切り出しかた、同期、連続性を作品構造の中心に据えられることが、この媒体の特質である。