ビデオアートとは、ビデオ(電子的な映像信号とその記録・再生装置)を表現の媒体とする美術の領域である。1960年代、放送局の専有物だった映像技術が携帯型のビデオ機器の普及によって個人の手に渡ったことを背景に成立し、ナムジュン・パイクらが受像機そのものを彫刻的な素材として扱ったり、走査線や信号を直接操作したりする試みを行った。劇映画のような物語の伝達を目的とせず、映像信号の物質性、モニターやプロジェクションという装置の存在、そして記録と再生に伴う時間の性質そのものを主題とする点で、映画とは異なる系譜を形づくった。単チャンネルの作品から、複数のモニターや投影を空間に配置する映像インスタレーション、撮影された像をその場で送り返すクローズドサーキットの作品まで、形式は幅広い。時間ベースのメディアを扱う実践として、メディアアート電子芸術の前史をなす領域でもある。

デジタル化以後のビデオアートでは、映像を一列に並んだフレームの列としてではなく、時間軸を第三の軸とする立体、すなわち時空間ボリューム(ビデオ・キューブ)として扱う手法が展開している。この見方では、通常の再生は立体を時間軸に垂直な断面で順に切り出す一つの限定された走査にすぎない。断面の角度を傾ける、複数の時刻を一画面に同時に配置する、slit-scanによって空間の一列と時間を交換する、といった操作は、いずれもこの立体を別のやり方で切り出す行為である。映像の記録が持つ時間の厚みを可視化し、観客の知覚の枠組みを組み替える方向へビデオアートを押し広げる試みといえる。