序論

2026年8月13日に公開されたインタビューで、ジョン・ジェラード(1974年、アイルランド・ティペラリー生まれ)は、自作における時間について次のように語っている。「私のオフライン作品の多くは、実在する場所の時刻と座標に固定されている。……ループさせることも、反復することもできない」「私の作品における持続は、奇妙なかたちの誠実さだ。あなたが見ていようといまいと、それは起こり続ける。世界がそうであるように」(CLOT Magazineのインタビュー)。

この二つの発言は、作品そのものの性質を述べたものだ。しかし、何かが「起こり続ける」ためには、どこかで機械が止まることなく動いていなければならない。その機械は誰のもので、電気料金は誰が負担しているのか。ジェラードの作品は石油、電力、データセンターを主題とし、まさにそうした費用の所在を問いかけている。だとすれば、作品そのものの稼働にも、同じ問いを向けることができる。

本稿では、まずジェラードの作品から出発し、稼働に伴う費用の帰属を考えるための道具として、三つの文書——GHGプロトコルのScope 2ガイダンス、RICSの全生涯炭素評価基準、Gallery Climate Coalitionの算定ツール——を参照する。このうち二つは、この費用に名称を与えながら、その計上を任意としている。

作家の文書に記された連続性

ジェラードのウェブサイトには、作品ごとに時間に関する仕様が記されている。《Western Flag (Spindletop, Texas) 2017》のページには、こうある。「このシミュレーションには持続時間がない(始まりも終わりもない)。必要に応じてアニメーションの各フレームを計算するソフトウェアによって、リアルタイムで実行される」(作家サイトのWestern Flagのページ)。《Solar Reserve (Tonopah, Nevada) 2014》は、ネバダの現地から見える太陽、月、星の動きを365日にわたってシミュレートする。1万枚の鏡は太陽の位置に応じてリアルタイムで向きを変え、視点は24時間のあいだ、60分ごとに地上から衛星へと循環する(作家サイトのSolar Reserveのページ)。《One Thousand Year Dawn (Marcel)》(2005)では、画面のなかで昇り続ける太陽が、3005年9月にその行程を終える。そのとき青年は立ち去り、作品は無人の風景として続いていく(作家サイトのOne Thousand Year Dawnのページ)。

《Exercise (Djibouti)》(2012)について、ジェラードは前掲のインタビューで次のように語っている。「シミュレーションは、どこか別の場所で起きた上演を表象しているのではない。上演はシミュレーションの内部にのみ、誰かが見ていようといまいと、永続的に存在する」。

ここで、一つ区別しておきたい。時計から導かれる状態と、蓄積によって生じる状態は異なる。《Western Flag》と《Solar Reserve》で決まっているのは、太陽の位置と、それに応じて変化する影や鏡の向きである。これらは現在時刻と座標の関数であるため、機械を止め、後日再起動しても、同じ状態を再現できる。一方、《Exercise (Dunhuang)》(2014)では、衛星測量されたゴビ砂漠の道路網を39人が移動し、互いに遭遇すると一方が脱落する。24〜36時間ほどで最後の一人が残り、その時点でリセットされる(作家サイトのExercise (Dunhuang)のページ)。こちらは経過そのものを蓄積するため、機械が止まれば、その蓄積は失われる。

連続性に関する主張が最も強い言葉で記されているのは前者だが、機械が連続して稼働することを実際に必要とするのは後者である。これは、作家の記述から私が読み取った区別であり、作家自身がこのように分類しているわけではない。

上映されている時間

《Western Flag》はチャンネル4の委嘱により制作され、2017年4月22日のアースデイに放送された。また、サマセット・ハウスとの協働により、同館のエドモンド・J・サフラ・ファウンテン・コートに設置された大型LEDスクリーンでも公開された。作家のウェブサイトに記載された会期は、次のとおりである。「日程:4月21日〜4月27日/時間:毎日午前7時〜午後11時」。

デザートXでは、2019年2月9日から4月21日まで、パーム・スプリングス市の入口にフレームのないLEDウォールとして設置された。《Solar Reserve》は、ロサンゼルス郡立美術館(LACMA)のレズニック・ローンで、2018年7月12日から9月3日まで展示された。

「始まりも終わりもない」という記述と、7日間、1日16時間という上映時間は、直接には矛盾しない。作家が持続時間をもたないと述べているのは、シミュレーションの構造についてであって、上映が途切れないという意味ではないからだ。しかし、そうなると、上映されていない時間に何が実行されているのかという疑問が残る。ジェラードのオフライン作品が展示されていないあいだも計算を続けているのか、それとも設置のたびに、その時点の時刻から起動し直されるのか。私が確認できた公開資料には、その点に関する記述はない。前節の区別に照らせば、太陽の動きに従う作品では、どちらの方法でも同じ画面が再現される。一方、脱落の経過を蓄積する作品では、そうはいかない。

「コードとしてのみ存在する」

2018年のLACMAの告知には、作家自身の言葉が引用されている。「この作品は希望と美を放つが、同時に一つの幻影でもあり、ソフトウェアのコードとしてのみ存在する。この作品が問いかけていることの一つは、エネルギー危機を太陽光発電施設によってどこまで解決できるのか、そして、私たちが世界のエネルギー消費を減らさないのであれば、再生可能エネルギーをめぐる楽観そのものもまた、どこまで幻影なのか、ということである」。

同じ段落のなかに、二つのことが書かれている。一つは、作品が物質をもたないコードであるという記述。もう一つは、エネルギー消費を減らさないかぎり、再生可能エネルギーをめぐる楽観は幻影ではないかという問いである。しかし、そのあいだに、レズニック・ローンに設置されたフレームのないLEDウォールは登場しない。作品を「コードとしてのみ存在する」と記述した瞬間、スクリーンと、それを動かす電力は記述の外へと追いやられる。

Sphere——同じ電力に二つの数字がある

2023年9月29日以降、《STANDARD》(旧題《Surrender (Flag) 2023》)は、ラスベガスのSphereで開催されたU2の公演 U2:UV Achtung Baby Live At Sphere の一部として上映された。モハベ砂漠に近いネバダ州の実在地点における太陽、影、星の動きをそのまま描き、白い旗は水蒸気の噴煙によって形づくられる。作家によれば、この作品は「停止、休戦、より大きな惑星的現実への服従といった観念に向かって、未来を見つめている」(作家サイトのSTANDARDのページ)。ゲームエンジンを提供したUNIGINEは、この映像の解像度を268,435,456ピクセルと記録している(UNIGINEの告知)。

その1か月前の2023年8月24日、会場側は電力の調達計画を発表していた。Sphere Entertainmentは、ネバダ州の電力会社NV Energyとの25年契約をネバダ州公益事業委員会(PUCN)に提出し、予測使用量にもとづいて、電力のおよそ70%を専用の太陽光発電・蓄電設備から調達する見込みだと述べた。さらに、次のように記している。「再生可能エネルギーに由来しない電力については、Sphereが認証済みの再生可能エネルギー証書を自主的に取得し、この会場向けの発電に伴う排出の影響を全面的に相殺する」。また、「太陽光発電・蓄電施設の稼働に先立ち、Sphereは、非再生可能なすべての電源による影響を相殺するため、再生可能エネルギー証書を自主的に取得する」とも述べている(Sphere Entertainmentの発表)。

つまり、《STANDARD》が上映されていた時点で実際に機能していたのは、太陽光発電所ではなく証書だった。この契約がPUCNに承認されたかどうかは、私が確認できた資料からは判断できなかった。発表文自体にも、「承認されれば」という条件が付されている。

証書によって排出係数を置き換える方法は、規格にも明記されている。温室効果ガス算定における事実上の共通ルールであるGHGプロトコルのScope 2ガイダンス(2015)は、冒頭の要求事項で次のように定めている。「契約証書の形で製品別または供給者別のデータが提供されている市場で事業を行う企業は、Scope 2排出量を二つの方法で報告し、それぞれの結果に用いた方法の名称を明記しなければならない。一つはlocation-based methodにもとづくもの、もう一つはmarket-based methodにもとづくものである。これは『二重報告(dual reporting)』とも呼ばれる」(GHGプロトコル Scope 2ガイダンス、1.5.1節)。

location-based methodでは、その電力が実際に流れた系統の平均排出係数を用いて計算する。market-based methodでは、証書や電力購入契約によって割り当てられた排出係数を用いる。「100%再生可能エネルギーで稼働している」と言えるのは後者の数字によってであり、それによって前者の数字が消えるわけではない。規格は、どちらか一方を選ぶことを認めず、両方を並べて報告するよう求めている。同じ1kWhの電力に対して、常に二つの数字が存在する。

《STANDARD》がSphereで消費した電力量そのものは、公表されていない。報道では会場全体の電力需要が扱われているものの、そのうち一つの演目が占める量は切り分けられていない。

SPIRITS——計算が鑑賞者の端末へ移り、太陽が止まった

2025年12月21日の冬至以降、LACMAのArt + Technology Labは、ジェラードの《SPIRITS》を公開している。四つの大洋に面した海岸で拾われた96個の漂着プラスチック製の靴を、写真データ群から学習したニューラルネットワークが生成する半透明の点群——ガウシアン・スプラット——として描く作品である。冬至(2025年12月21日)、春分(2026年3月20日)、夏至(2026年6月21日)、秋分(2026年9月22日)の4日間、それぞれ午前0時から翌日の午前0時まで、LACMAのホームページを占める。「モバイルウェブブラウザ向けにWebGL技術を用いて特別に設計されて」おり、鑑賞者は手元の端末で靴に触れ、動かすことができる(LACMAのUnframedの記事)。

ここでは、描画処理が美術館の機械を離れ、鑑賞者の端末上で実行される。そして、この移動とともに、もう一つの変化が起きている。前掲のインタビューで、ジェラードは次のように語っている。

「WebGL(ブラウザ上のゲームエンジン)を使ったオンライン作品は流動的だ。初期の作品は年周期のレジスターを維持しているが、新しいガウシアン作品はそうではない。《SPIRITS》の世界では、対象を全方向から撮影するために、人工の浜辺と人工の太陽、空を組み立てた。だから太陽は影や質感のなかに存在するが、動かない。今のところは」

LACMAの紹介文には、この作品が「一太陽年を通じて展開する」とあり、公開日は天文学上の四つの節目に合わせて設定されている。外側の枠組みは太陽年に固定されている一方、作品世界の内側では太陽が止まっている。《Western Flag》や《Solar Reserve》を成立させていた「実在する場所の時刻と座標への固定」は、ここでは外枠の日程へと移されている。

「あなたが見ていようといまいと起こり続ける」という言葉は、この作品には当てはまらない。鑑賞者がページを開いたとき、その端末上で初めて計算が始まるからだ。

誰の帳簿に入るのか

稼働に使われる電力を誰の勘定に付けるのか。そのための名称を用意した文書がある。RICS(王立チャータード・サベイヤーズ協会)の専門基準『建築環境のための全生涯炭素評価』第2版は、2023年9月に公表され、基準本文の1.9節には「本基準は2024年7月1日に発効する」と記されている。

この基準は資産の生涯を段階別に分け、B6(エネルギー使用)とB7(水使用)を operational carbon(運用炭素)、A0–A5、B1–B5、C1–C4をembodied carbon(内包炭素)と呼ぶ。さらに、三つ目の区分を設けている。

User carbon利用者炭素 モジュールB8の利用者炭素とは、使用段階における利用者による建物またはインフラの利用に伴う温室効果ガス排出(B6およびB7を除く)を指す。

例として挙げられているのは、オフィスへの通勤や、道路を走行する車両である。つまり、資産を稼働させるための電気や水ではなく、その資産を利用する人の活動によって生じる排出を指している。

ところが、この項目には条件が付いている。第5.5節には、次のように記されている。「評価対象の資産に関連する利用者活動の影響を定量化することは任意であり、モジュールB8の情報はWLCAにおける追加情報を構成する」。図18に示されたB8の三つの下位モジュール——利用者の移動、利用者による電気自動車の充電、その他の利用者活動——には、それぞれ「(optional)」と記されている。報告様式の一覧でも、B8の行は「User carbon B8 (where relevant)」となっている(RICSの基準本文)。

美術分野の枠組みについても確認してみよう。Gallery Climate Coalition(GCC)は、美術分野の脱炭素化に向けた手引きと算定ツールを公開し、主な排出源として移動、輸送、建物のエネルギーを挙げている。デジタルの項目は、「組織によるウェブ上の活動のうち、その影響をエネルギー料金から測定できないもの——クラウドサービスやウェブサイトのホスティングなど」と定義され、「オフィス、スタジオ、保管施設の稼働に使われるエネルギーを指すものではない」と限定されている(GCCのデジタルに関するページ)。エネルギーに関する手引きでは、美術館やギャラリーで特に影響の大きい項目として、「作品を収めた空間の空調に使われるエネルギー」が挙げられている(GCCのエネルギーに関するページ)。来館者と職員の移動は、「shared emissions」として別枠で算定される(GCCの算定ツールの説明)。

どちらの枠組みにも、作品そのものを鑑賞者の端末で動かすための電力を記入する欄はない。GCCのデジタルの項目が対象とするのは組織側のホスティングであり、閲覧者側の端末は含まれない。RICSにはそれに近い項目としてB8があるものの、計上は任意である。

flowchart TD
    A["作品が走り続けるための電力"] --> B["会場のLEDウォールで走る場合"]
    A --> C["鑑賞者の端末で走る場合"]
    B --> D["会場のScope 2"]
    D --> E["location-basedの数字"]
    D --> F["market-basedの数字(証書で置き換え)"]
    C --> G["RICSモジュールB8『[[user-carbon|利用者炭素]]』=任意"]
    C --> H["GCCの算定ツールには該当欄なし"]

会場のLEDが消費する電力は、会場のScope 2に計上される。そこには、規格が要求する二つの数字——実際に流れた電力にもとづく数字と、証書によって割り当てられた数字——が並ぶ。一方、鑑賞者の端末が消費する電力は、そのどちらにも含まれない。

ジェラードの公開資料には、いずれの展示についても電力消費量の記載がない。私が調べた範囲では、LEDウォールの消費電力も、年間の稼働電力量も公表されていない。作品が扱う対象——石油、太陽熱発電所、データセンター——については、現地の座標まで精密に写し取られている。それにもかかわらず、作品そのものの稼働については、数字が存在しない。

止まる作品

ここで、止まらないことを条件としない実践にも目を向けておこう。

Kris De Deckerの Low-tech Magazine は2018年9月以降、太陽光で自家発電し、自らホスティングするウェブサイトを運営している。30Wのパネルと168Whの鉛蓄電池を用い、消費電力は1〜2.5W。サイト自らが「これは太陽光で動くウェブサイトである。つまり、ときどきオフラインになる」と記し、2018年12月から2019年11月までの351日間の稼働率が95.26%だったことを公表している(Low-tech Magazineの太陽光サイトに関する解説)。

Tega Brain、Alex Nathanson、Benedetta Piantellaによる Solar Protocol は、世界各地に設置された太陽光サーバーのネットワーク上でホストされ、その時点で最も多くの太陽光を得ているサーバーへ通信を振り分ける。「すべてのサーバーで蓄えられたエネルギーが不足すれば、ウェブサイトが停止することもある」と明記されている(Solar Protocol)。

この二つの実践は、稼働そのものを作品の読解可能な部分にしている。停止する可能性が、仕様に組み込まれている。ジェラードの作品は止まらないことを条件としているが、止まらないために必要な費用は、作品から読み取れるものになっていない。

ただし、この対比は対称的ではない。Low-tech MagazineSolar Protocol も、可視化しているのは自らのサーバーが使う電力であり、閲覧者側の端末が使う電力ではない。B8は、ここでも空欄のままである。稼働そのものを主題とした二つの実践でさえ、利用者側で生じる稼働には手が届いていない。

結び

「あなたが見ていようといまいと起こり続ける」という言葉は、作品の性質を説明するものとして語られている。しかし実際には、これは配置についての記述である。どこかに、止まることなく動き続ける機械があるということだ。

その機械が会場のものであるかぎり、費用は会場の帳簿に現れる。GHGプロトコルは、そこに常に二つの数字を並べるよう求める——実際に流れた電力にもとづく数字と、証書によって割り当てられた数字である。機械が鑑賞者のものになると、費用は、名称のある項目——RICSのモジュールB8、すなわち利用者炭素——へと移る。しかし、その項目への記入は任意であり、美術分野の算定ツールには、そもそも該当する欄がない。

そして《SPIRITS》では、機械が鑑賞者のものになったのと同じ移動のなかで、「止まらない」という条件そのものが外れている。太陽は動かない。作家自身の言葉を借りれば、今のところは。

参考文献