ジョン・ジェラード(1974年、アイルランド・ティペラリー生)は、ゲームエンジンを「ゲームを作る道具」から切り離し、リアルタイムで作動し続ける彫刻・風景・シミュレーションのメディウムへ転換した作家である。オックスフォード大学ラスキン美術学校で彫刻を学び、シカゴ美術館附属美術大学でMFA、ダブリン大学トリニティ・カレッジでMScを取得した。2000年代初頭のArs Electronica Futurelabでの活動を経て、3Dスキャン・リアルタイム3D・プログラミングを組み合わせる制作方法を確立し、以後はプログラマーとの共同制作を軸としている。
初期の重要作《One Thousand Year Dawn (Marcel)》(2005)は、海辺の若者と太陽を1000年の実行時間をもつ仮想世界として構築した作品であり、のちのゲームエンジン作品群の出発点をなす。以降の作品では、ダストボウル、産業養豚、石油採掘、軍事演習、太陽光発電所、データセンター、気候変動といった主題が、録画された映像ではなく「いま計算されている世界」として提示される。観客はプレイヤーではなく、自分の到着以前から作動し、退場後も動き続ける世界の観測者に置かれる。
近作ではビーチで収集したプラスチックのサンダルや靴を高解像度のガウシアン・スプラッティングでフォトスキャンし、モバイルブラウザ上でライブレンダリングされる仮想的な彫刻へと変容させている。ゲームエンジン、リアルタイム計算、環境政治を結びつける一貫した方法がここにも表れている。