アルゴリズムの壊乱とは、画像生成モデルの推論過程に意図的な乱れを加え、エラー・歪曲・生成ノイズを作品の表面に浮かび上がらせる手法である。一般的なAI生成が均質で写真的なリアリズムを目標とするのに対し、この手法はその滑らかさを積極的に破壊する。生じるノイズや歪みは単なる不具合ではなく、人間と機械が相互に作用した痕跡として、また機械のロジックの限界を露出させる指標として扱われる。
ケヴィン・アボッシュは、自身の写真アーカイブで訓練した拡散モデルをあえて壊乱させることで、モデルの内側に彫刻された世界像のほつれを可視化する。作品シリーズ『#CIVICS』(2023年、メルボルンのビクトリア国立美術館NGVトリエンナーレ)や『Ethical Work』(2025年)では、抗議活動や市民的不服従、警察による圧力を模した100点の合成分光写真が提示された。一見すると報道写真でありながら、細部にはAI由来のノイズが混入しており、それが画像の出自を告白する。
この手法の批評的な狙いは、完成度を上げることではなく生成過程の不完全さを露出させることにある。写真は本来ただの複写でありながら、人はレンズの捉えた像を絶対的な真実と誤認してきた。壊乱されたイメージは、ディープフェイクや情報操作が横行する状況において、何が現実であり真実の境界がどこにあるのかを観客に問い返す装置として働く。