代替現実ゲーム(ARG)とは、現実世界そのものをプラットフォームとして展開される物語型のゲームである。ウェブサイト、電話、電子メール、印刷物、街頭の現物、実地のイベントなど複数のメディアに手がかりを分散させ、参加者はそれらを横断して収集・解読しながら物語を進める。専用のゲーム機やアプリを持たず、日常のメディア環境の内側に虚構が紛れ込んでいる点が特徴である。運営者は「パペットマスター」と呼ばれ、参加者の反応に応じて物語を書き継ぐ。
設計上の原則としてしばしば挙げられるのが「これはゲームではない(This Is Not A Game)」という態度である。虚構であることをあえて宣言せず、実在するかのように振る舞う仕掛けを配置することで、参加者に「これは現実なのか、それとも仕組まれたものなのか」と一瞬迷う状態を生む。入口となる不自然な手がかりは「ラビットホール」と呼ばれ、そこから掲示板などに集まった参加者が集合的に謎を解いていく。個人では解けない規模の課題を意図的に置き、協働を前提とする点でも通常のゲームと異なる。2001年の映画『A.I.』のプロモーションとして展開された『The Beast』や、2004年の『I Love Bees』が初期の代表例として知られる。
長期的な設計、運営の労力、参加者の予期しない行動への耐性を要するため、ARGは少数の制作者と熱心な参加者に支えられたニッチな文化にとどまってきた。一方で、現実と虚構、ゲームと社会、制度と遊戯の境界を揺らがせるその構造は、展示やインスタレーションの構成原理としても参照される。ゲームの内と外を隔てるマジックサークルが意図的に曖昧化されるため、参加者が同意していない他者を巻き込まないための配慮が設計上の課題となる。