Auto-Destructive Art(自己破壊芸術)は、グスタフ・メッツガーが1959年に提唱した芸術概念で、作品が外部から偶然破壊されるのではなく、作品の成立条件そのものに変質・腐食・解体・消失のプロセスがあらかじめ組み込まれている点に特徴がある。ここで重要なのは「破壊」だけでなく「Auto(自己)」であり、作品は完成した静的な対象ではなく、時間の経過とともに不可逆に進行する出来事として構想される。
メッツガーは、ナチス・ドイツの迫害を逃れてイギリスへ渡った経験を背景に、戦後社会における核兵器、大量生産、資本主義、技術発展がもたらす破壊的な力に向き合った。1961年のロンドンでの公開制作では、ナイロン布に酸を噴霧し、化学反応によって布そのものを溶解させたとされる。このように、制作行為は開始された後に作者の手を離れ、作品は自ら崩壊していく。
自己破壊芸術は、社会が内包する「自己破壊的傾向」を芸術の内部で作動させ、その構造を露呈させる方法でもある。破壊は否定的な終焉ではなく、創造と等価なプロセスとして捉え直され、作品は保存される物体ではなく、変化し続ける場として提示される。