デジタル座標変換とは、デジタル画像や映像を、画素の値そのものではなく「どの座標から値を読み取るか」を書き換えることで変形する処理である。出力側の各点に対して入力側の参照位置を与える写像を定め、その位置の値を(多くは補間を伴って)取り出す再サンプリングとして実装される。拡大・回転・射影変換のような幾何変換から、ノイズ場やベクトル場を写像に用いるディストーションまで、原理はいずれも同じであり、見かけの歪みは座標の読み替えの結果として現れる。

デジタルの映像においては、時間もまた一本の座標軸として扱える。フレームを奥行き方向に積層すれば、縦・横・時間の三軸からなる時空間ボリュームが得られ、通常の再生はこの立体を時間軸に垂直な断面で順に切り出す操作にあたる。断面の角度を傾ける、断面を曲面にする、走査線ごとに参照する時刻をずらすといった変換は、空間の座標と時間の座標を交換する操作であり、slit-scanもその一種である。

古澤龍の《Passing》は、この操作を作品の主題に据えている。連続するフレームから仮想的な三次元ボリュームを生成し、そこから取り出す断面の角度を回転させることで、画面内の各位置が参照する時刻がずれていく。結果として一枚のフレーム内の時間の同時性が崩れ、消失点へ収束する遠近法的な空間が平行投影的な空間へと変容する。線遠近法から軸測投影への移行を、投影法の設計ではなく座標の読み替えによってシミュレートしていることになる。古澤による Python ライブラリ「imgtrans」は、こうしたビデオ・ボリュームから任意の角度で断面を切り出すためのツールキットである。