フォークゲームとは、特定の企業や著者によって内容が固定されるのではなく、遊ぶ人々のあいだで口伝や手作りの複製を通じて伝わり、地域やコミュニティごとに変形しながら定着していくゲームを指す。鬼ごっこや石けり、トランプの多くの遊び方のように、確定した正式版が存在せず、遊ばれるたびに再制作され、ローカルな「うちのルール」が併存するのが特徴である。民謡(フォークソング)と同じ意味での「フォーク」であり、権利者のいない公共の財として流通する点で、著作者と製品が一体になった商業ゲームと対照をなす。
代表例として挙げられるのが『The Landlord's Game』である。リジー・マギーが1906年に自費出版したこのゲームは商業的には成功しなかったが、大学の講義やコミュニティを通じて、学生や参加者が自作のボードと駒をつくり友人や家族へ伝えるという形で全米に広がった。その過程でゲームの名称やマス目の地名は各地で書き換えられ、ニュージャージー州アトランティックシティのクエーカー教徒のコミュニティでは実在の通り名に置き換えられ、家やホテルの立体トークン、地価の固定価格といった要素も加えられた。今日の『モノポリー』の骨格は、こうした匿名の改変の積み重ねから生まれている。
フォークゲームという概念は、権利の帰属をめぐって法的な争点にもなった。ラルフ・アンスパックによる訴訟では、「モノポリー」という語とそのゲームシステムがパーカー・ブラザーズやチャールズ・ダロウの発明ではなく、それ以前に公共ドメイン(パブリックドメイン)のフォークゲームとして存在していたことの立証が争われた。誰のものでもない遊びを一社の商品として囲い込めるのか、という問いを含む概念である。