「計算を素材とすること」とは、コンピュータを単なる抽象的な処理装置としてではなく、表現のための素材そのものとして扱う考え方を指す。作品の意味や主張をあらかじめ固定するのではなく、近傍の取り方、複数種族の関係、生命力、視覚と音の連動といった計算ルールを設計し、その相互作用から変化が継続的に立ち上がるボトムアップ型の生成システムを構成する方法として示されている。ここでは、人間が最終形を直接決めるのではなく、計算の反復と要素間の相互作用によって作品が生成される点が重要である。

また、この考え方はデジタル物質主義とも関係づけられている。コンピュータは抽象的な論理の器ではなく、物理的な素材として捉え直され、計算や消去が熱力学的な痕跡を残すものとして理解される。さらに、ブロックチェーンのような分散型計算環境では、作品は固定された物体ではなく、コードとして実行され、状態を変化させながら存続しうる。こうした文脈では、計算そのものの性質を用いて、自己変化や不可逆性、消失を作品構造に組み込むことが可能になる。