グスタフ・メッツガーが1961年にロンドンのサウスバンクで行った自己破壊芸術の実演を指す用語。軍用のガスマスクとゴーグルを着用したメッツガーは、ナイロンのシートに塩酸を吹き付け、化学反応によって布を溶解させた。酸は描画の道具であると同時に、素材そのものを消滅させる主体として働き、シートには不規則な穴が開いた。その穴の向こうには、セント・ポール大聖堂などロンドンの風景が現れ、破壊によって新たな視界が生まれることが示された。

この実践は、作品が作者の手を離れ、開始後は自律的に進行して消滅するという自己完結性を持つ。また、破壊そのものが公共の場で行われることで、私的な所有や鑑賞を拒否し、芸術市場への抵抗としても機能した。さらに、核兵器が都市を瞬時に溶解させる恐怖の可視化という政治的意味も担っていた。したがって、アシッド・アクション・ペインティングは、破壊と創造、政治性、反市場性が結びついたメッツガーの代表的な実践である。