グスタフ・メッツガーが晩年に行ったプロジェクトで、2012年にロンドン・フィールドワークスとの共同制作として発表された。作品では、メッツガーが脳波インターフェース(EEG)を装着し、20分間「何も考えない」ことを試み、その脳波データをもとに産業用ロボットがポートランド石のブロック内部を切削した。記録されたデータは特注ソフトウェアによって3D形状情報へ変換され、ロボットに送信されることで、石の内部に「空虚(void)」が刻み込まれた。
この試みは、アーティストの自己中心性を排し、創造の主体を人間からデータと物質の相互作用へ移す実践として位置づけられる。また、物理的なものを非物質化するのではなく、「何もないというアイデア」を石の中に記念碑的な空虚として定着させる点に特徴がある。自己破壊芸術における「無(null)」を、生産的なカテゴリーとして再定義しようとした試みでもあった。