《One Thousand Year Dawn (Marcel)》は、アイルランド出身の作家ジョン・ジェラードが2005年に制作した作品である。海辺に立つ若者と昇る太陽を、1000年という実行時間をもつ仮想世界として構築したもので、ジェラード自身が最初の成熟したゲームエンジン作品として振り返る位置にある。
画面に現れる映像はあらかじめ撮影・録画されたものではなく、現在時刻や太陽の位置、キャラクターの状態、仮想カメラ、物理演算といった条件からその瞬間ごとに算出される。鑑賞者が見ているのは完成した一枚の絵ではなく、長期にわたって計算され続ける世界の断面である。1000年という時間尺度は、人間の鑑賞時間や作品の展示期間をはるかに超えており、作品の全体を誰も見通せないという構造そのものが主題となっている。
本作以降、ジェラードはダストボウルの荒地、産業養豚場、油田、軍事演習場、太陽熱発電所、大規模データセンター、気候変動といった対象を、記録映像ではなくリアルタイムに生成される世界として制作していく。ゲームエンジンを遊技の道具ではなく彫刻的な媒体として扱う実践の起点をなす作品といえる。