キーパーとは、スマートコントラクトの外にいて、コントラクトが用意した仕事を、報酬を受け取る代わりに実行する参加者である。Keep3r Networkの文書は「A Keeper is the term used to refer to an external address that executes a job」(キーパーとは、ジョブを実行する外部のアドレスを指す語である)と定義し、仕事の中身は「取引を一つ呼ぶだけの単純なもの」から「大がかりなオフチェーンの処理を要するもの」まであるとする。コントラクトは自分からは動けないので(→ 自律的な計算)、時刻や条件が満たされたときに処理を進めたいコントラクトは、処理を呼ぶ関数を誰にでも開き、呼んだ人に報酬を払う形で、外から呼び手を呼び寄せる。ethereum.orgのMEVの文書が「searchers」(サーチャー)と呼ぶ、チェーンのデータを監視して利益の出る取引をボットで送る参加者は、こうした報酬の主要な受け手である。
事例
荒川零一《upgradeTo(Leviathan)》(2026)は、100体のアップグレード可能なコントラクト(市民)それぞれに0.001 ETHを持たせ、定められた時刻を過ぎれば誰でも呼べるexecute()が、実装を差し替えたうえで残高の全額を呼んだ人に送るように作られている。「自己破壊芸術展」(NEORT++、2026年10月2日〜18日)の会期中にチェーンの記録を読むと、100体はすべて切り替わり、10月5日以降の63体は時刻が開いた次のブロック(11秒後)かその次で切り替えられていた。呼んだ14のアドレスのうち10はEIP-7702の委任コードを持つアカウントで、64件の取引は報酬の約1割をブロックの手数料受取先に直接送っていた。作品解説が「anyone」(誰でも)と書いた呼び手は、実際には報酬を監視するキーパーだった。
対照的に、0xfff《Diminishing Returns》は、腐食の執行を来場者の送金に委ね、呼ぶ人が手数料を払い報酬は受け取らない。会期中の起動は10月7日の1回にとどまった(→ 繰り延べられた劣化)。荒川零一《assumevalid》は、呼び手を外に求めず、作家自身の機械を会場に置いて開館時間だけ動かした(→ デューティサイクル)。
作品の側から見ると
コードとして実行される作品が「自ら変化する」と言うとき、変化を実行する作用因は三通りに置かれうる。作品の外の人に費用を負わせて呼ばせるか、作品の外のキーパーに報酬を払って呼ばせるか、作品の側の機械を動かし続けるかである。キーパーに委ねた作品は、来場者を待たずに変化し、変化の速さは報酬の額とチェーンの周辺にいる参加者の密度で決まる。作品が内に含むのは作用因そのものではなく、作用因を呼び寄せる残高である。