繰り延べられた劣化は、時間の経過によって進むと定められた劣化が、時刻が来た時点では実行されず、次に誰かが作品を呼び出したときに、経過した分だけまとめて実行されることを指す。本Wikiのリサーチで、Ethereum上の作品を読むために立てた言葉である。
Ethereumでは、トランザクションを開始できるのは秘密鍵を持つ外部所有アカウントだけで、コントラクトは受け取ったトランザクションに応じてしか動かない(ethereum.org)。そのため、コードに「1日ごとに劣化する」と書かれていても、劣化が状態に書き込まれるのは、誰かが手数料を払って呼んだときである。呼ばれない間に過ぎた時間は、次の呼び出しで清算される量として残る。物質が放っておいても錆びたり溶けたりするのと違い、劣化の進み方は、呼ぶ人が現れる頻度に依存する。
事例
0xfff《Diminishing Returns》(2026)は、経過時間による腐食を1日1ビットと定め、起動のたびに前回からの経過日数分をまとめて実行する。1回に実行するのは最大64ビットで、超えた分は捨てずに次の起動へ回す。2026年10月の「自己破壊芸術展」(NEORT++)の会期中、10月2日から10日までに起動されたのは1回で、その間に積み上がった腐食は、次に送金した来場者の取引の中で実行される。手数料は送金した人が払う。
荒川零一《upgradeTo(Leviathan)》(2026)は、展示の解説によれば、100個のコントラクトそれぞれに設定された時刻が過ぎると、誰でもexecute()を呼んで実装を切り替えられ、呼んだ人はコントラクトが持っていたETHを報酬として受け取る。変化を起こす呼び出しを、報酬によって誘う設計と読める(コードは未確認)。
対照として、0xDEAFBEEF《Entropy》(2021)は時間を入力に使わず、転送の回数だけを数える。