デジタル人文学(Digital Humanities, DH)は、コンピュータ科学の手法やデジタル技術を人文学の研究に応用する学際的な研究領域である。テキストマイニングやコーパス分析、デジタルアーカイブの構築、地理情報システム(GIS)を用いた歴史・文学研究、ネットワーク分析による思想史の可視化などを含み、1990年代以降の「ヒューマニティーズ・コンピューティング」の系譜から発展した。人文学の対象である文献・歴史・文化を計算可能なデータとして扱い、規模と再現性を伴う新しい読解・分析の方法を提示する点に特徴がある。個別の作品を精読するのではなく大量のテキストを統計的に俯瞰する「遠読(distant reading)」は、その代表的な方法概念である。

近年は、この方法論をデジタルアートやゲームの歴史研究へ向ける動きが目立つ。ビデオゲームは、ソースコードからROMカートリッジ、プラットフォーム、開発者の記録、パッケージアートまでを含む複合的な文化人工物として、ゲーム研究とデジタル人文学の双方が扱う対象になった。デジタルアート史の領域でも、蓄積し続けるアーカイブやデータベースを遠読・データ可視化・パターン認識によって組織化する試みが進み、さらにアーカイブやデータベースの地位そのものを主題とするAIアートのプロジェクトを、研究の対象ではなく研究の方法として組み込む実践も現れている。データベースを分析対象と表現媒体の両面で扱うこうした二重性は、デジタル人文学とメディアアートの方法論的な合流を示している。