電子芸術とは、電子回路やコンピュータ、ネットワークといった電子技術を成立条件とする芸術の総称である。1960年代以降、電子音楽、ビデオアート、コンピュータ・アートが相次いで成立するなかで、絵画や彫刻のような素材別の区分では捉えきれない実践を束ねる枠組みとして用いられるようになった。オーストリア・リンツで1979年に始まったアルス・エレクトロニカや、国際電子芸術シンポジウム(ISEA)といった場が、この語のもとで作家・技術者・研究者を横断的に結びつけてきた。

電子芸術の特徴は、完成した静的な物体ではなく、実行される過程そのものが作品の本体になりうる点にある。コードが走ることで映像や音が変化する展示、規則の設計によって形が生成されるジェネラティブアート、鑑賞者の身体や選択が作品の状態を変えるインタラクティブ・アートは、いずれも作者が最終形を直接描くのではなく、変化を生むしくみを設計する。ネット・アートはインターネットそれ自体を素材とし、ASCII文字だけで構成された作品、ブラウザの挙動を逆手に取ったサイト、既存サイトの複製・改変といった手法によって、技術の利用と批評を同時に行った。

この語は単一のジャンル名ではなく、ネットワーク、コード、相互作用、生成を横断する実践の集合を指す。メディアアートやニューメディア・アート、インターネット・アートといった呼称と重なりながら用いられ、たとえばゲームを媒体とする芸術のように、複数領域をまたいで形成された系譜を記述する際にも参照される。