『モノポリー』は、盤上の土地や不動産を買い占め、他のプレイヤーを破産させることで勝利するボードゲームである。世界中で親しまれ、資本主義と不動産投機の縮図として語られる定番作だが、その原点は1903年にリジー・マギー(Elizabeth Magie)が考案した『The Landlord's Game(家主のゲーム)』にさかのぼる。マギーの意図は娯楽ではなく、ヘンリー・ジョージの地価税思想を広め、土地の私有と地代の独占が貧困と格差を生むことを体験的に示す教育的・政治的なシミュレーターだった。44マスの正方形の盤面には「Go to Jail」「Public Park」「Poor House」といったコーナーマスや、電気・路面電車などの生活インフラ、都市の不動産、森林や油田といった天然資源が配置され、現在のモノポリーに直結する構造を備えていた。

『The Landlord's Game』には、土地を独占して他者を破産に追い込む「独占ルール」と、地代を公共の国庫に納めて全員の繁栄を目指す「繁栄ルール」という対照的な二つのルールセットが用意されていた。ところが、大学や地域コミュニティで手写しに近い形で伝播していく過程で繁栄ルールは次第に忘れられ、独占ルールだけが残った。1932年にアトランティックシティ版を体験したチャールズ・ダロウが盤面を写して自作ゲームとして販売し、1935年にパーカー・ブラザーズ社へ持ち込むと、同社は「失業中の男が地下室で発明した夢のゲーム」という成功神話を作り上げ、マギーの名は歴史から消えた。この由来が広く知られるようになったのは、1970年代にラルフ・アンスパックが商標をめぐる訴訟の過程で起源を掘り起こしてからである。

この経緯は、ゲームが社会制度を批評しうるメディアであると同時に、伝播の過程で作者の意図とは正反対の意味へ転化しうることを示す事例として、しばしばフォークゲーム論やシリアスゲーム論のなかで参照される。