ジェイソン・ローラー(1977年生まれ)は、ゲームを娯楽の形式ではなく概念芸術の媒体として扱う作家として知られるゲームデザイナー・プログラマーである。作品を公共ドメインに置くという非営利的な配布形態をとりながら、人間の条件、死生観、社会システム、実存的恐怖といった主題を一貫して扱ってきた。ルールに基づくシミュレーションを通じて、現実では経験しにくい、あるいは意識から排除されがちな概念をプレイヤーに直接突きつける点に特徴がある。
代表作《Passage》(2007年)は、5分ほどで一人の生涯を体験させる小品である。プレイヤーは若者として旅を始め、時間の経過とともに老い、最終的に必ず死を迎える。死はクリア条件ではなく人生の終着点として置かれ、選択には常に恩恵と代償が伴うこと、努力が必ず報われるとは限らないことが、物語ではなくルールそれ自体によって表現される。
ローラーの設計思想において、ゲームはしばしば「道徳的な実験場」として機能する。プレイヤーを極限の選択や複雑な利害関係のなかに置くことで、人間社会の本質的な対立構造を浮かび上がらせ、エスカピズムの道具であったメディアを実存的な気づきをもたらす装置へと変容させた。作品がMoMAの永久収蔵品に選定されたことは、ビデオゲームが真剣な芸術形式として受容される道筋を象徴する出来事となった。