Any%とは、スピードランにおける最も基本的なカテゴリ名で、達成率や収集率を問わずゲームのエンディングに到達するまでの最短時間を競う区分を指す。名称は「クリア率は何%でもよい」という意味に由来し、アイテムやマップの完全収集を条件とする100%、グリッチの使用を禁じるGlitchless などと対をなす。
Any%が特徴的なのは、開発者が想定した進行順序そのものを攻略対象とみなす点にある。バグ、当たり判定の抜け、メモリの書き換えを引き起こす操作といった手段が積極的に用いられ、区画を飛び越して物語の中盤や終盤へ直接跳ぶシークエンスブレイクが標準的な戦術となる。プレイヤーは与えられたルールに従うのではなく、ソフトウェアの実装そのものを探索し、そこで見つけた挙動を新しい規則として共有していく。禁止事項を最小限にとどめたこの区分は、結果としてゲームの誤用を体系化し、公式の遊び方の外側に別の正典を積み上げる営みになっている。
この語は、ゲーム文化を超えた比喩としても用いられる。展覧会「Any% Multideveloper — Reality in Polyphony」では、繰り返される円環を壊してトゥルーエンドのフラグを立てるための態度としてAny%が引かれ、与えられた現実の仕様を読み替えながら別の未来を開発し続ける実践の名として拡張されている。