mod(modification)とは、既存のゲームのデータやコードを改変して作られる派生物、およびその改変行為を指す。1990年代に『Doom』や『Quake』がレベルデータやリソースの差し替えを許す構造で流通したことで、プレイヤー自身がマップ・グラフィック・ルールを書き換え、パッチとして配布する文化が定着した。ゼロから作るのでもなく、与えられたものをただ遊ぶのでもなく、他人が設計したシステムの内側に差分を書き込むという制作形態がここで成立する。

メディアアートでは、1990年代後半から2000年代にかけて、この形態が既存ゲームのコード・ルール・グラフィックを「レディメイド」として扱う実践へと展開した。JODI の《Untitled–Game》(1998–2002)や《SOD》(1999)は『Quake』『Wolfenstein 3D』を改変し、FPS の空間を白黒の抽象へと変換して操作可能性そのものを攪乱する。ブロディ・コンドンの《Adam Killer》(1999–2001)は『Half-Life』を改変し、白い空間に複製された同一人物への暴力へとプレイヤーの行為を限定した。作品の所在が画面上の最終結果だけでなく、コード、ROM、パッチ、そしてその配布行為にまで及ぶ点が、この系譜に共通する特徴である。

mod は同時に、プレイヤー側からのゲームの変異としても理解される。プレイヤーは作者の意図を受動的に受け取る存在ではなく、改造や想定外の使用、別の解釈を通じてゲームの意味を書き換える主体となる。ハッカー・アートやソフトウェアの物質性をめぐる議論と接続する概念である。