誤用の正典化とは、利用者やプレイヤーによるシステムの「誤用」——設計者が意図しなかった使い方——が、時間を経てそのシステムの公式機能や正統なジャンルとして制度化される循環を指す概念である。マシニマの技術史から導かれた概念であり、本 Wiki のリサーチが提出した新語である。
典型的な系譜はマシニマに見られる。1996年、プレイヤーたちは Quake のデモ記録機能——本来はプレイの検証用だった——を映画制作に転用した。この「誤用」はやがて、Valve 自身が開発した公式の映像制作ツール Source Filmmaker として再演され、さらにゲーム内の映像編集機能やフォトモードとして各社の製品に組み込まれていった。同じ構造はスピードラン文化にも見られる。バグやグリッチの利用は当初「壊れたプレイ」だったが、いまや Any% のような公認の競技カテゴリであり、開発者がスピードラン向けの機能を実装することさえある。グリッチアートやネットアートにおけるプラットフォームの創造的誤用が、のちにジャンルの規範となる過程も同じ射程にある。
この循環は、システムの基層に最初から潜在していた可能性が、逸脱的な実践を通じて段階的に発見され、最終的に制度の側へ回収される過程として理解できる。単なる流行の商業的回収ではなく、テクノロジーの潜在性をめぐる利用者と設計者の長い対話である。ただし裏面もある。ヨハン・ホイジンガが『ホモ・ルーデンス』で警告したピュエリリズムは、遊びが制度に取り込まれて幼稚化する退落を指しており、誤用の正典化と正確に対称の運動をなす。逸脱の創造性が公認され、賞金や記録認定の制度に完全に組み込まれた時点で、正典化はその反対物へ転じうる。