ホモ・ルーデンスとは「遊ぶヒト」を意味するラテン語で、人間を道具や理性によってではなく遊びによって定義しようとする人間観を表す。オランダの歴史家ヨハン・ホイジンガが1938年に刊行した同名の著作に由来する。ホイジンガは「遊びは文化より古い」という命題を掲げ、文化が遊び「の中で」生まれるというより、遊びのうちに、かつ遊びとして発生し展開する(in and as play)と論じた。

ここでの遊びは単なる娯楽ではなく、自発的に選ばれること、日常生活から離れていること、時間と空間が限定されていること、独自の秩序と規則をもつことによって特徴づけられる文化作用である。ホイジンガは遊びにはそれぞれの「遊び場」があり、その領域は物質的にも観念的にも前もって区画されうると述べ、競技場、カード卓、寺院、舞台、法廷を同型の場として並置した。そこでは日常世界とは別の規則が支配し、一時的な世界が立ち上がる。1949年の英訳に現れる “magic circle” という語もこの文脈で用いられたものであり、のちのマジックサークル論やゲーム研究は、この記述を体系的な概念へと再構成していった。ホイジンガ自身が完成した理論として提示したわけではないという点は、概念史上しばしば見落とされる。

同書の終章は遊びの賛歌ではなく、現代文化の病への警告で閉じられる。ホイジンガはそれをピュエリリズムと名づけ、真面目であるべき事柄が遊びのように扱われ、遊びには軍事的・愛国的な熱狂が注ぎ込まれる状態を、遊びと真面目の境界の崩壊として批判した。