炭素除去(Carbon Removal)とは、すでに大気中に放出された二酸化炭素(CO₂)を回収し、長期的に大気から隔離する取り組みを指す。文脈上では、温室効果ガスの排出削減を補完する手段として位置づけられ、特に産業や航空など、完全な削減が難しい「残留排出」を相殺する役割が重視されている。炭素除去は、気候を長期的に安定化させるために重要とされ、1.5℃目標のシナリオでは今世紀後半から本世紀末にかけて大規模な負の排出が必要になる可能性が示されている。
手法は大きく自然ベースと技術ベースに分かれる。自然ベースには植林、森林造成、土壌炭素の増加などがあり、比較的安価に実施できる一方、再放出リスクや潜在量の制約がある。技術ベースにはDAC(二酸化炭素直接空気回収)やBECCSがあり、理論上はより恒久的な隔離が可能だが、コスト、エネルギー消費、貯留先の確保が大きな課題である。現状では、実際の除去量は世界の排出量に比べて非常に小さく、DACは試験段階にとどまっている。したがって、炭素除去は排出削減を置き換えるものではなく、あくまで補助的な気候対策として扱う必要がある。