Webブラウザとは、URLで指定された資源を取得し、HTMLを解釈して文書構造を組み立て、CSSでその見え方を決定し、JavaScriptを実行して動作を与えるソフトウェアである。1990年代前半に登場して以来、World Wide Web を閲覧する窓であるだけでなく、レイアウト、描画、スクリプト実行、ネットワーク通信を一体で備えた汎用の実行環境へと発展し、Canvas や WebGL といった描画のためのAPIも標準として備えるようになった。

このため、Webを主要なメディウムとするアートにおいて、ブラウザは単なる表示装置ではなく作品そのものを成立させるメディウムとして機能する。コードベースの作品の多くは HTML / CSS / JavaScript で書かれており、その実行環境であるブラウザの仕様が、構造も見え方も決定する。NFTのプラットフォームでは画像・映像・コードが並列に扱われるが、再生場所に依存しない画像や映像と異なり、コードベースの作品にとってブラウザはキャンバスにあたる。Kitasenju Design の《Brutal Divs》は CSS だけでグラフィックを構成し、Leander Herzog の《Downloads》は HTML の要素をプログラムで動かすことで抽象表現を作り出しており、いずれもブラウザの挙動そのものが作品の素材になっている。

ブラウザはまた、Webという環境を指し示す象徴的なモチーフでもある。ウィンドウという「窓」の枠組み、スクロール、リンク、読み込みといった振る舞いは、オンライン空間での経験の質を語るための語彙として作品に取り込まれる。Yehwan Song の作品では、ウィンドウが情報を提示する窓として扱われ、オンライン空間の抑圧や圧迫の感覚を伝える要素となっている。