作品の同一性を記述する文書——目録の材質表示、真正性の証明書、作家の設置指示書——に記載された特性のうち、誰も何もしなくても真であり続けるのではなく、誰かが行為を続けているあいだだけ真であるものを指す。ここでは新造語として提出する。既存語で最も近いのは保存修復の分野の「有意な特性(significant property)」だが、そちらは「作品が忠実に展示されるために守られなければならない条件」を指すだけで、その条件が一度きり満たされれば済むのか、途切れずに満たされ続けなければならないのかを言い分けない。同じ分野の「依存(dependency)」は資源のあいだの関係を指し、目録がその関係をどの欄に書くかには触れない。維持される特性は、この二つの語が扱っていない差分——記載の書式は材質の記述と同じなのに、内容は継続的な引き受けであるという差分——に名前を与える。
「油彩、カンヴァス」は記述である。所有者が何もしなくても、明日も本当のままである。「無限持続」は記述ではない。誰かがプラグを挿していなければ、今日から偽になる。目録は両者を同じ欄に、同じ書式で並べる。だから、その作品を維持する義務が誰にどれだけ生じているかは、目録の見た目からは分からない。
この語が問いを立てるのは次の三点においてである。第一に、ある作品の材質表示の各項目は、誰も行為しなくても真であり続けるか。第二に、真であり続けさせる行為を負うのは誰か——所蔵機関か、作家か、作家の遺産財団か、外部のサービス事業者か。第三に、同じ作品を複数の機関が持つとき、各機関は同じ引き受けを記録しているか。第三の問いは経験的に確かめられる。目録は公開されているからである。
事例
イアン・チェン《BOB (Bag of Beliefs)》(2018–2019) — 同一作品について、二つの美術館の公開記録が異なる引き受けを記載している。ホイットニー美術館の記録(受入番号P.2021.3、エディション10分の7に作家保存用3点)は材質を「Live simulation, sound, artificial intelligence service; infinite duration」とする。「無限持続」は誰かが稼働させ続けなければ偽になり、「人工知能サービス」は第三者が動かし続け、誰かが払い続けなければ無くなる。一方、M+(香港)の記録(オブジェクト番号2020.133)は材質を「digital simulation (colour, sound)」とし、寸法の欄に「real-time」と記す。M+の記録には引き受けの記載が無い。同じ作品が、片方では継続的な義務を伴う材質で、もう片方では静的な記述だけで目録に入っている。
同作の維持作業 — 保存修復家キャス・フィーノ=ラディンは、ホイットニーが「無限持続」と記録した当のエディションを、アスペン美術館の展覧会「Mountain / Time」(2022年)のために組み立て、会期中稼働させ、9月に停止した。『frieze』誌の記事(2022年11月15日)で「停止して梱包する前に……この段階で、《BOB》はもはや存在しないと言ってよい」と書き、さらに「テクノロジーを用いる芸術作品はすべて、本来的にパフォーマンスである」と一般化している。維持の中断は目録の記載を訂正させない。
ホセ・カルロス・マルティナット・メンドーサ《Brutalism: Stereo-Reality Environment 3》(2007、テート所蔵T13251) — 引き受けと、引き受けの果たし方とを作家自身が分けた例。テートのパトリシア・ファルカン、アネット・デッカー、ピップ・ローレンソンの論文によれば、マルティナットは作品が常にライブの接続を持ち検索エンジンにつながっていることを重要と考える一方、当初使ったGoogleは同等の結果を返すかぎり別の検索エンジンに置き換えてよいと述べている。維持されるべきなのは接続が生きていることであり、相手が誰であるかではない。
ソル・ルウィットのウォールドローイング — 反対側の限界事例。真正性は譲渡不能な証明書が決めるが、壁の塗り直しという行為は作家の死後も遺産財団が供給し続けている。証明書という物体の所持(記述)と、設置を成立させる作業の供給(引き受け)が、一つの作品のなかで別々の主体に割り当てられている(The Artist's Sanctionを参照)。