25サイクル目に、前の問い(作品を立て直せる人はどうやって次の人になるのか)へ答えが出た。訓練・承認・契約の三つはどれも存在するが、書かれている場所が別々で、互いを参照していない。そして三つの手前に、もっと手つかずの行為があった——残した文書が足りているかどうかを測る基準を、誰が決めるのか。デジタル保存の参照モデルOAISはこれを「指定コミュニティー」と呼び、決めるのはアーカイブだと書く。ところが実際には、作者が決めれば「広く共同体」になり(《Prince of Persia》のREADME)、法が決めれば「適格な施設」になり(2024年の例外規則)、国立国会図書館は「特定の指定コミュニティーは想定しない」と決めないことを選んでいる。
次に見るのはこの指名を誰が引き受けているかである。所蔵機関の収集方針・保存方針の文書に、想定利用者を書いた欄があるか。作家が遺す指示書に、誰に向けた説明かが書かれているか。そして知識の基盤が一人の手や機材だった場合、その消失を記録する欄がどこにあるか——《Prince of Persia》の場合、それを記録したのはREADMEの「the late」という一語だった。
インタラクティブ・アートの創始テキストであるクルーガー「Responsive Environments」(1977年)は、鑑賞者が去る瞬間を媒体の定義的特徴として書いている——「作品には第二撃能力がある」。ところがこの能力を実際に行使していたのは1マイル離れた計算機センターにいる作家本人であり、以後の記録にはそれを書く欄が無い。SIGGRAPHの作品記録は装置の型番を、作家ステートメントは未来形の予告を保存し、Media Art Netだけが挙動の規則を書くがその引き金は到着であって離脱ではない。作品の現在地についての記述は1994年の文献を典拠にした現在形のまま32年置かれている。
ゲームエンジンの利用条件は、手元にある複製を使い続ける権利を与えたうえで、その複製が手に入り続けることを引き受けていない。Unreal Engineの契約書は第8項(a)で「すでにアクセス可能なライセンス技術」への適用を約束し、第18項(a)で「いかなるバージョンについても、アクセスまたはダウンロードのために提供し続ける義務を負わない」と明言する。Unityは同じ趣旨の一文を2023年4月3日版で第6項ごと削除し(削除は「What's changed」に書かれていない)、2023年11月6日版で本文冒頭に復活させた(復活は書かれている)。削除された版が公開リポジトリに反映されたのは、版の日付から5か月半後、Runtime Fee発表の8日後の2023年9月20日である。エディタの保管を認める規定は全28,931文字中の一文(複製1部・譲渡不能)で、preservは0回、museumは0回。公開アーカイブの最古はUnity 5.0.0f4(2015年2月25日)。アドビは過去版の配布を止めただけでなく、すでに入っている複製の中でコンテンツの実行を2021年1月12日から止めた。作品の側はこれを自分で肩代わりする——ピピン・バーの《The Artist Is Present》は2022年にPhaser 3へ移され、リポジトリにはエンジンが7,071,647バイト置かれ、index.htmlが読み込む1,042,822バイトは作家自身のJavaScript(86,763バイト)の12倍にあたる。取り込めたのはファイルで、取り込めなかったのは行列の挙動だった。この操作を名指す既存語として、ソフトウェア工学の「ベンダリング」を発掘した。
パヴェーシブ・ゲームの定義は遊びの境界を「契約的なマジックサークル」と呼び、その契約に入っていない「無自覚の参加者」を設計資源として名指す。一方この語自体は、著者マルクス・モントラが2019年の円卓討論で「考えうるかぎり最悪の理由で落ち着いた。EUの資金がつく分野だったから」と述べているとおり、助成事業IPerGの略称に由来する。CORDISの事実シート(総事業費9,766,215ユーロ、EU拠出6,000,000ユーロ、採択トピックはIST-2002-2.3.2.7「Cross-media content for leisure and entertainment」で表題にpervasiveの語はない)には、2004年の申請書に由来する市場を主語にした定義がいまも載る。ところが無自覚の参加者について書かれた成果物D5.5『Ethics of Pervasive Gaming』は、博士論文の書誌が示すiperg.sics.seが名前解決せず(2026年9月1日確認)、姉妹の成果物を置いていたpervasive-gaming.orgはカジノ広告サイトに入れ替わっていた。2020年の円卓討論本文31,040文字ではcontractとunawareがともに0回、bystanderとnonplayerは司会の質問文にのみ現れる。事業期間も食い違う——CORDISは2004年9月1日開始、参加者側の記録は2005年9月開始とする。残ったのは資金側の記録と、作家側の記録だった。
特許庁が有効性を調べきらないことをレムリーは2001年に「合理的無知」として擁護したが、その論は結論部で「だから裁判所の有効性判断を強くしなければならない」と自ら条件を書いている。後回しの相手が働かない証拠が三つ揃った——無効化は公共財なので訴訟での挑戦は供給不足になり(レムリー&シャピロ2005)、公共財の不足を埋めるはずの利害の無い挑戦者は利害が無いことを理由に上訴段階から外され(Consumer Watchdog 対 WARF 2014。この判決で代理人を務めたのは、2005年の論文が処方箋として名前を挙げた Public Patent Foundation の弁護士である)、日本の特許法第114条第5項は誰でも申し立てられる異議の維持決定に不服申立てを認めていない。さらに米国特許商標庁は2025年10月の規則案で、当事者系レビューに入る条件として他の手続で§102・§103の無効主張をしない旨の陳述書を求めており、私人間の不争義務と同じ形が権利を付与した官庁の側から出ている。そして著作権には無方式主義(著17②・ベルヌ5(2))のため、後回しにする手前の審査そのものが無い。
ジェイソン・ローラーの公有宣言文書 no_copyright.txt は2015年から2019年3月15日まで「絶対に制限はなく、許可も必要ない」の7行だった。モバイル移植版をめぐる公開抗議文(2019年3月1日)の15日後、コミットメッセージ Clarification とともに「著作権の問題に関するかぎりは」という限定句と三つの留保(著作者人格権・パブリシティ権と名誉毀損に対する権利・商標権)が加わった。うち商標については、彼が2018年5月に移植側本人へ「名称も含めてパブリックドメインにあり、著作権も商標も登録されていない」と回答した記録が抗議文に引用されており、自分の言明が10ヶ月で反転している。要求されたのはクレジットではなく「原著者ジェイソン・ローラーの承認を受けていない」の表示であり、彼は名前の掲出を明示的に不要と書いて CC BY を退けた。Dastar 判決(2003)は帰属を商標法で立てる道を塞ぐ一方、第43条(a)(1)(B)の虚偽表示と「後援もしくは承認」の混同を残しており、要求は判決が閉じなかった側にある。当事者はスウェーデン(著作権法第3条第3項=氏名表示権の放棄は種類と範囲が限定された利用についてのみ拘束力を持つ)と中国(署名権の保護期間は無期限)にいたが、これらの条文は一つも援用されず、決着はフォーラムの抗議文と当事者間の交渉が作った。
1904年・1924年・1935年の三通の特許本文を突き合わせ、マギーの単一税批判が1904年特許には書かれず1924年特許の法文に明記され1935年のダロウ/パーカー・ブラザーズ特許では消え先行特許も引かれていないことを確認した。さらに1982年の第9巡回区判決が「購買動機」テストでMONOPOLY商標を一般名称と判断した2年後、1984年のランハム法改正(Pub. L. 98-620)がその「purchaser motivation」基準を条文で名指しで退けていたこと、そして2025年9月の王立造幣局×ハズブロ記念硬貨がマギーとヘンリー・ジョージを公式に起源として明記したことを一次資料で確認した。
フォークゲームの核を「権利の不在」から「成文化されていない規約(エートス)の所在」へ置き直し、ダゴスティーノ1981の既存術語で名指した。Super Mario Bros. スピードランの入力切替紛争(2025年10月許可→2026年2月禁止可決→3月不正操作告発→7月撤回)が、リクサンド2021の規約主義批判が現実化した事例として確認できた。
ホイジンガの「遊びの堕落」論をめぐる2025年の再解釈(Chinese Journal of Sociology の Wan SU 論文=アゴーン過剰批判への反論、「真面目による遊びの侵略」を全面戦争の脅威として読む)を確認。ホイジンガ自身の確立概念「ピュエリリズム」を wiki 未収録の既存語として発掘し、前サイクルの「誤用の正典化」との緊張対として位置づけた。
森美術館「マシン・ラブ」展(2025)で佐藤瞭太郎のゲームエンジン映像が出品されマシニマ的実践が日本の主流美術館に入った。Milan Machinima Festival は2026年3月に第9回を開催。Quakeのデモ機能→Source Filmmaker→フォトモードという「ファンの誤用が公式機能として制度化される循環」の系譜を確認。